2022

市営万町住宅

能代市/鉄筋コンクリート造・ラーメン構造/地上5階+PH階/延床面積北棟1550.94m2・南棟1670.64m2

市民に親しまれ、長く住み続けられる市営住宅

市営万町住宅は、昭和25、26年に建設された建物で、施設や設備の老朽化が著しいことから、能代市住生活基本本計において建替えを行うことが定められ、平成23年度に基本計画の策定及び事業手法検討調査を実施し、現在地で建設する計画となりました。
秋田県が発表した津波浸水想定では、三海域連動地震により最大クラスの津波が発生した場合、現在地で4〜5mの浸水が想定されることから、本市の津波避難計画に基づく適切な避難による安全確保した上での整備方針となっています。
能代市住生活基本法に掲げられた基本理念に基づき、住宅施策を推進していくための基本目標として、6つの整備方針を掲げた基本設計とします。

1.多様なライフスタイルに対応できる住み続けられる安心・安全な住まい
2.高齢者だけでなく、誰もが安全かつ快適に生活できる高齢者等に対応した住まい
3.省エネルギー化や木材の活用など地域特性を活かし環境に配慮した住まい
4.建物・設備の維持・修繕が行いやすい適正な維持管理と計画的な住まい
5.津波など災害対策
6.住棟計画及び居住性能


「能代市住生活基本計画(平成 22 年 3 月)」の基本理念である、“ひと・まち・すまい”が調和する「木のまちのしろ」の住まい・まちづくり、及び「能代市公営住宅等長寿 命化計画(平成 22 年 3 月)」に基づき、市民に親しまれ、長く済み続けられる市営住宅を目指します。

見上げパース1
見上げパース2

街のスケールと調和した佇まいを継承した配置計画

既存市営住宅は、昭和25、26年に建設された歴史あるRC造建築物です。南面する2つの住棟がゆったりと並行配置され、緑豊かな中庭や南北通り抜け動線を有する、街のスケールと調和した佇まいを継承した配置計画とします。
・建物外周に5m以上の空地を確保し、全ての部分が延焼の恐れのある部分にかからない建物配置とします。
・「空地」から「使われる空間」へ。空地はそれぞれに特徴を持たせた計画とし、単なる空地ではなく、イベントやラジオ体操などのできるアクティブな広場と、景観に変化を持たせた広場や、木陰の小道など、特徴を持たせた「使われる空間」づくりとします。
・見通しを良くすることで死角を無くし、住民同士はもちろん、近隣住民や商業者、医療福祉事業者、行政等団地に出入りする人々による見守りケアの可能な計画とします。住棟同士の視線の見え方に配慮し、2棟の配置は大きくずらしながら角度をつけた配置とします。

人が通り抜け集まる動線計画

・街と繋がる開かれた敷地、人が通り抜け集まる動線とするため、2棟間のズレやピロティを上手く使い、視線の抜けと回遊する動線を確保します。
・ピロティを利用した軒下空間は、玄関ポーチや自転車置き場とする他、屋内外の中間的な使い方ができ、繋がる空間、憩える溜まりをつくります。散歩の休憩や、子供の遊び場、井戸端スペースなど、多世代が居住する共同住宅として、コミュニティ形成に繋がる場を整えます。
・交通安全確保のため、車両出入口を西側大通り交差点からなるべく離した位置(東側)とします。
・駐車場を東側~北側に配置し、並行して通り抜け動線を確保します。緊急車両や除雪車の通り抜けを可能とします。車道駐車場を外側に配置し、建物側に歩行者動線を確保することで、歩車道分離します。敷地から道路への出入口を明確にし、不規則な出入りや子供の飛び出しを防ぎます。
・南北通り抜け通路を設け、利便性を高めます。通り抜け目的の無用な車両通行防止のため、通路はクランク状とします。

井戸端スペース
南棟縁側ホール

外構計画

・東西敷地境界には、防犯対策としてフェンスを設けます。
・南北約1mの高低差を緩やかな勾配で処理します。
・維持メンテナンス負担軽減のため、植栽は広場の芝生と低木植栽とします。
・除雪に配慮し、堆雪スペースを確保し、ローダーにより損傷する恐れのある段差や突起物の無い構造とします。

平面計画

(1) 1階平面計画

1階は居住の用に供せず、エントランスや物置、自転車置場、受水槽室を配置します。余ったスペースは、屋外に開放されたピロティ(軒下空間)とすることで、入居者や来訪者の溜まりの空間「井戸端スペース」とします。

(2) 基準階平面計画

共用部分を住棟中央部にコンパクトにまとめ、各住戸へのアクセスを短くし、利便性の高い計画としています。このことにより、北側居室が共用廊下に面することなく直接外気に面することを可能としました。
エレベーターホールは、ゆとりあるスペースとし、災害時の一時避難場所としての活用を可能とします。

立面計画

(1) 維持管理に配慮した仕上計画

「木都のしろ」に相応しい外観とするため、維持管理のしやすいバルコニー面の外壁を板張りとします。他の部分は塩害に強い金属サイディングや押出成形セメント板とします。

(2) 周辺環境と調和し、かつ、シンプルで機能的な外観

周辺の米代川や遠くに広がる日本海や白神山地など雄大な景観に調和するよう、おおらかで清潔感のあるデザインとします。無理な形態や無用な装飾に頼ることなく、シンプルで機能的な外観とします。

断面計画

(1) 1階

津波浸水想定区域内(想定高さ=現況地盤面+5.00m)であることから、1階を居住の用に供せず、かつ、2階床面を現況地盤面+5.00m以上とします。
配管の維持更新に対応するため、一部配管ピットを設けます。

(2) 基準階

間取り変更を含めた住戸専用部の更新に対応するため、梁間等に十分な空間があり多様な間取りに対して空間利用ができるよう、適正な階高を確保します。
配管の維持更新に対応するため、一部スラブを下げ、床下配管スペースを確保します。

(3) PH(塔屋)階

屋上の維持点検を容易にするため、PH(塔屋)階を設けます。

内装計画

北棟2LDK。

内装材は、特別な仕様のものではなく一般的なものとし、地元で調達できる材料と技術で建築可能とするとともに、維持更新のしやすい納まりとします。
共用部にアクセント的に市内で開発された製品を用い、普及促進に務めます。

南棟1LDK
南棟3LDK。

OUTLINE

市営万町住宅

  • 所在地/能代市
  • 施主/能代市
  • 設計者/設計チーム木協同組合
  • 延床面積/北棟1550.94m2・南棟1670.64m2
  • 構造/鉄筋コンクリート造・ラーメン構造
  • 階層/地上5階+PH階
  • 施工年/2022年
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