2015

道の駅ふたつい

能代市/木造/地上2階建/延床面積2874.7m2

山河美し、きみまちの郷の魅力を発信し 、交流が生まれる道の駅

建築の目的

日本海沿岸東北自動車道の延伸に伴い 、既存の道の駅がインターチェンジ用地になるための移転整備である 。 「山河美し、きみまちの郷の魅力を発信し 、交流が生まれる道の駅」がコンセプト 。 古くから交通の要衝であるとともに、現在では世界遺産白神山地のインバウンド観光を支援するインターチェンジ直結の道の駅として 、 さらには河川防災ステーション(川の駅)と一体的となった総合防災拠点としての機能を併せ持つ 。

設計コンセプト

【ランドマーク】
米代川と七座山の大きな景観になじむおおらかさとランドマークとを両立させるデザイン 。 インターチェンジからの軸線を米代川・七座山へと貫通させるゲートとしてのアーチ型大屋根。 大屋根ヴォールトは道と川とを結ぶコンコースとなり来訪者の通り抜けを促す 。

【配置平面計画】
機能分散型ではなく、エントランスを1ヵ所に集約することで賑わいを創出。各ゾーンへは雁木を介してアクセスする。 大屋根を中心とし、両側にウィングを伸ばす形状。来客を包み込むようウィングを緩やかに湾曲。

【構造計画】
地域材と地域職人を生かす秋田スギ規格流通製材を主体とした在来軸組工法とする。(12cm×24cm×4m以下) 接合部簡易化のため、嵌合を多用し、支圧による応力伝達で構造用ビス・ボルトによる接合。

【防耐火計画】
防火壁により1000m²未満ごとに区画 。防火壁には木造耐火構造を採用 。一部に木質耐火部材を使用 。

エントランス=アーチトラス

長さ3m以下の通直製材を用い、3列の梁を2列の飼木を介して、嵌合接合により一体化している。断面寸法12cm×24cmで一般流通材として安価に入手できる。スパン22mのアーチトラスを4.5m間隔で4本設けている。大工の手加工で地組みされたトラスをクレーンで吊り上げて建て込んだ。

物販施設=挟み張弦トラス

下弦材を船底形にした挟み張弦トラス。上弦材と下弦材、束材で構成される梁で、接合部での断面欠損を最小限にとどめるため、1本の梁の両端を2本の梁で挟んでビス留めする納まりを採用した。

レストラン=方杖連続トラス

登り梁を両側からの方杖で支えるトラス梁。最大で約10mのスパンを実現している。方杖と登り梁との接合部において、応力を効率よく伝える流れホゾとした。木材は嵌合接合とビスによって固定している。

地域と木の建築

地域の文化や風土が表現され、木の建築文化と芸術の振興に寄与していること。

建築地は中世からの林業と木材加工の一大集積地では、それにともなう職業・生活・祭りなどの文化や風土が歴史民俗資料コーナーに表現されている。二ツ井・能代は林業 ・木材生産加工・木造住宅建築が自活できる地域であり、住宅はもちろんのこと大型の学校や中規模の木造建築が数多く見られる。年間100万人の訪問者は木で大きな魅力ある空間ができていること、身近に構成材を見ると住宅に使われている木材であることを知り驚嘆する。自分の家の同じ規格流通材木材であり同じ技術で魅力ある大きな空間ができているのだと。それが、この地域の建築文化と芸術であることを納得する。

地域の事業者や職人が主体となり、木の建築技術の継承や地場産業の発展に寄与していること。

地域のJVの建築会社・協力業者や職人が主体となり木の建築技術の継承を考え、架構木材はプレカット加工ではなく大工が仕口や継手を墨付けし手刻みしている。そのため に、接合部簡易化のため嵌合を多用し、支圧による応力伝達で構造用ビスと引きボルトによる接合を基本とした。各空間の形状・用途に応じた架構計画を行った。もちろん建築産業も大きな地場産業である。

木材を主として用い、森林の保全、林業、木材産業の振興に寄与していること。

森林の保全・林業・木材産業はこの地域の大きな地場産業である。構造材・外装材・内装材のほとんど全てにわたり地 域の木材を用い、建設工事に積極的に参加し振興に寄与している。

木材の持続可能な利活用が図られ、木の建築 の修復や再利用、長寿命化に寄与していること。

戦後植林された樹齢60年~80年生の秋田杉が増加し新たな需要開拓が求められている。この大径材の付加価値を高めるために、平角材や幅広の平割材を無垢のまま有効利用することを考えた。無垢材使用のため、防火壁を設置し燃え代不要の軸組表わしとした。
壁中などが内部結露で腐朽せず長寿命化であるように、透湿抵抗を考えた水蒸気・温熱管理設計をしている。外装は耐候性が大きい杉の赤身材のみを使っている。杉外装材と窓との取り合いなどは耐久性が劣るシーリングを使わないオープンジョイント工法である。杉板はこの地域ではいつでも用意できている素材なので修復しやすい。
省エネルギー木造建築は持続可能な社会に寄与し、温熱省エネルギー性能はQ値1.2W/m2・Kの高性能である。

米代川と七座山を背に来訪者を迎えてくれる道の駅。対岸の七座山は江戸時代の留山。
アーチトラス外観(夜景)。
町中で発見された約900年前の秋田杉の埋もれ木。
地元の杉間伐材を使った給湯ボイラ。
トイレ内観。
外壁;秋田スギ赤ナマハゲ 巾180×厚18施工状況。
木質耐火柱の断面。
アーチトラスの地組み・建て方状況。

受賞

第1回ウッドファーストあきた木造・木質化建築賞 木造部門最優秀賞
令和元年度木材利用優良施設コンクール 林野庁長官賞
第16回 木の建築大賞

OUTLINE

道の駅ふたつい

  • 所在地/能代市
  • 施主/能代市
  • 設計者/設計チーム木協同組合
  • 施工者/大森・サンワ・成田特定建設工事JV
  • 延床面積/2874.7m2
  • 構造/木造
  • 階層/地上2階建
  • 施工年/2015年

外部仕様

  • 屋根/ガルバリウム鋼板
  • 外壁/スギ板(赤ナマハゲ)t18、鉱物系耐久塗料塗り
  • 開口部/アルミ樹脂複合断熱サッシ

内部仕様

  • 床/床磁器質タイル、フローリング
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